打ち上げ花火、下から見るか 横から見るか(2017)の感想(ネタバレあり)

感想ブログがちらほら上がっているのに刺激されたので私も感想を残す。
なおネタバレありなので嫌な方は回避されたし。
















まず本作はジェネリック化物語であり、怪異を宿した美魔女たるヒロインが主人公たる中学生男児を誘惑し迷宮に絡め取っていく話だったと強く感じた。化物語との違いは、忍野が存在しないために怪異の解説や救済が存在せず、正体不明の怪異に飲み込まれたのか脱出したのか不明なまま終わる。。というのが本作が狙っていた余韻なのだろう。

が、正直あまり成功しているとは思えず、金を掛けたクソアニメと化しているというのが私の感想だ。
何と言ってもループあるいは迷宮を作り出している怪異(あるいは魔具)の説明がほっとんど無かったのはキツイ。
ファンタジーにせよSFにせよ、非日常の現象を生み出す道具の背景が物語に深みを与えるものだが、本作ではそこがヒロインが海で拾ったということくらいしかわからず、何故その力が得られたのかという部分が雲散霧消してしまっている。ある意味パズル問題のように、鑑賞者はそういう道具が存在するのだから無条件に受け入れて解答を考えろと言われてるようだ。
また、本作の魔具はタイムリープを引き起こすだけの存在に留まらずに願望器へとなっているのも厳しい。
タイムリープものの醍醐味である、過去のルートをどう書き換えていくかの部分がほとんど魔具の力で達成されてしまうため、この部分を楽しむことができなくなってしまっているのだ。
総じて魔具を面白くストーリーに組み込むことに失敗しているように感じた。

なればキャラクターや演出で楽しみたかったところだが、そちらも本作は私には厳しかった。
ヒロインたるなずなの美魔女っぷりは私も興奮したのだが、ぶっちゃけ中学生という設定を完全に無視した色気を出しているため、怪異に取り憑かれているようにしか見えなかったのだ。逆に主人公はヒロインに対して幼すぎる上に吃りが非常に多く、リアリティがあるといえばあるが面白みに欠けており、両者ともにイマイチだった。
演出面については、今のシャフトの化物語そのものであり、尾石達也のキレッキレの演出大好きな私にはあまり響かなかったがまぁこれは好みだろう。

「文学的な作品なのにエンタメ作品として広報してしまったので失敗した」という擁護をちらほらネットで見るが、正直これは外れではないかと思う。
エンタメ作品として売る以上はエンタメ作品らしい作りをするべきで、新房昭之のシャフトはそのための原作改変や演出をよくやってきた組織だ。
本作も怪異の正体についての言及をもう少し入れて物語に入り込みやすくするとか、エンディングについても主人公がたどり着いたルートをもっと示唆するギミックを入れるとかをやって良かっただろう。

総評としては、金を賭けたクソアニメ感のあるパッとしない映画であると主張する。
ハンターの皆様はおそらく楽しめると思うので見に行くべき映画ではなかろうか。
あるいは蠱惑的なヒロインを楽しみに見に行くのもいいかもしれない。
点数は… 100点満点中50点ぐらいとしておこう。