小糸侑はロボなのか?

百合ランキングだかなんだかで一位を取っていた「やがて君になる」を手にして以来、私はこれから百合作品っぽくなさを感じていた。アニメが始まったことでまたこの作品を見返すことになり、当時感じていた違和感の部分をすこしずつ言語化できるようになったが、キレのいい言葉にまでは昇華できてなかった。しかし某闇氏のツイートでようやくいい言葉に出会えた。「ロボ」である。

「好きがわからない」小糸侑と「自分を好きにならないで欲しい」七海燈子の二人の関係性、そして小糸侑が「好き」を覚えていくプロセスが本作の主題だ。この構図、「本来感情を持たない(とされている)ロボ」を「自身に感情を向けない愛玩人形を欲するマスター」が愛するも、ロボが感情を獲得してしまうことで関係性が変化せざるを得なくなっていくという、古典的なSFと同じものを感じたのだ。愛憎のぶつけ合いの関係性を百合作品に求めたいた私としては、このSF的な別テーマを感じたためにやがて君になるを百合っぽくないと感じたのかもしれない。今後の原作含めた展開としては、「感情を獲得したロボ」小糸侑に対して「マスター」たる七海燈子はどう振る舞えるのかだろう。マスターの想定を超え、ロボから人間へと変化していく存在を拒絶するのか受け入れるのか、楽しみなものである。


なお、古典SFロボな面を見せてくれた小糸侑はそれはそれとしてさておき、佐伯沙弥香は全力でレズレズしているので直球で最高である。個人的に大変悔しいことに「佐伯沙弥香について」も最高だった。買うべき本である、ということで締めたい。