99%のためのマルクス入門

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100分de名著の資本論以来、マイマルクスブームがきていた。マルクス入門ならこれというツイッター投稿をみたので今回99%のためのマルクス入門を読み、私の中のマルクスブームが終わったのでその感想。本の感想と言うよりはマルクス思想への感想に近い。

マルクス思想の根幹である疎外論がまるでしっくりこない

  • 著者がかみ砕いてくれていても、ヘーゲル哲学書的な記述に毒されたあの何を言っているのかわからない文書がまるで理解できない
  • 生産力が人間を支配するという構図がしっくりこない。貨幣による富の貯蓄能力で十分説明できるものではないのか?生産力の権化である機械などを持ち出す意味は?
  • 労働こそが世界の基盤であるならば、社会の主役は労働者であるはずなのに、労働者が主役になれていない原因を疎外に求めている。しかし、不平等な分配の実現こそが人間だけが持つ能力であるというユヴァル・ノア・ハラリの指摘の方がしっくりこないか?

共産主義社会の正体

  • 友愛や家族的愛によるつながりをもった人間たちによる、自律的に構築される社会というのがどうも本質だったようだが、これはトマス・モアの描いたユートピアそのものでは?
  • ユートピアの人間たちはポリス的社会動物であり、自立していながら利他的な人間であり、弱者や国への奉仕をいとわない。これ確かにすべての民衆が幸せになれる世界であろう。しかしながらこのような世界が現実性にはトマス・モアでさえ否定気味だっただろう
  • しかしながらユートピアに魅せられたマルクスはこの不可能性を乗り越えたかった。ユートピアを現実のものにするため理論づけの苦心こそがマルクス経済学の本性だったのでは?
  • ユートピアの実現のためには何よりも人間の本質というか性根の改革が必要なことは自明であるが、それができるわけもない。ではどう理論づけるかの答えが「下部構造(経済)は上部構造(政治)を規定する」だったのではないか。
  • 下部構造を経済と規定すれば経済の話だけをすれば済む。経済の話ならば理論により語ることができる。人間の性根が変わっていく過程を示さずに済む
  • エンゲルスとは違い、マルクス自身はその人間の変質はそう簡単に実現しないことを察していたようだが、マルクス自身も変質の過程を示せていたわけではない。

以上、というようなことに思い当たった結果、私の中のマルクスブームは終了した。私は100分de名著の方で書かれていた「コモン」の構築という思想に惹かれたのだが、本来の共産主義はそんな現実性のあるものでは無かったのだ。そろそろここらで夢想に費やすのをやめるべき時なのだろう。