「反逆の神話」の読書感想

読んだので感想。

少なくとも序盤の読み応えはかなりある本だった。主な主張は「カウンターカルチャーなんて全て欺瞞だった上に資本主義/消費主義を強化するのに加担しただけだった」というもので、ここまで攻撃的なのはある種の自罰行為なのだろうなあと思いながら読みました。ある種の痛快さがあってここは楽しかったですね。
(しかしまあこの本かなり分厚い上に謎に第一部と第二部で分かれており、第一部で結構力尽きたので第二部はパラグラフリーディング()でかなり飛ばしながら読みましたが、あんま第一部と主張かわらんようなものが並んでいて微妙…)

色々考えさせられた読後の勢いのまま期待しながら解説も読みましたが、解説著者はマル経の人だったのかやたら左翼文化について語っていてどうも自分の感想とはかなり違ったものでした。(感想書きたみが出た一因でもあります。)

私が本書での主張の肝と感じたのは、「ルールというのは単なる抑圧ではなく、社会の構成員の利益のために存在するのだから、お前ら/俺らカウンターカルチャーの人間がルールをぶっ壊したら結果としてみんな損したんだよ」という部分です。書の中では信号やら交通規制やらや、フェミニストによる解放の顛末やらを、合成の誤謬の原理などと絡めて説明されていました。当然と言えば当然の話で、社会の全員が信号守らないなら安全に道路を使うことなど不可能です。カウンターカルチャー側がやったことは「信号を守ることは社会からの抑圧であり、それを守らないことによって社会変革を促す(!?)」というものであり、それが如何に欺瞞に満ちていたのかが延々と述べられていました。

ある意味でこの本はルールの便益や現在の社会の便益を、カウンターカルチャーによって破壊してしまった事後から語る試みであったと思います。そしてそれには完全に成功していますし、読後の感想としては「ルールって大事だよなあ」と思わざるを得ませんでした。カウンターカルチャーによる「幼稚」な解決に対する克服と反省と懺悔を本書で学んでみるのも良いんじゃないでしょうか。