春から新社会人になる人のための投資アドバイス:確定拠出年金編

四月から新社会人になる人に向けてのアドバイスなるものも私も書かんとす。其は老人が無条件に優越を抱ける唯一無二の娯楽である。。
というわけで真面目に春から会社員生活を始める人に向けて、確定拠出年金への一般的なアドバイスを考えていきたいと思います。

ただ一言、やめろ。以上。

確定拠出年金とは

iDeCoという名称をやたら見かける、国が提供する投資と節税の仕組みです。毎月一定の上限額まで積み立て投資が可能で、積み立てた分は税金の計算の基準となる「所得」から控除される上に投資による利益は非課税となるという非常にお得な制度です。個人型と企業型と呼ばれるものがあり、iDeCoは個人型に該当します。

重要なことは、基本的に確定拠出年金節税で儲ける制度であると言うことです。そして節税の源は所得控除であることをよく覚えておいてください。(もちろん投資利益の控除も大きいですが)


なんで「やめろ」?

新卒一年目では、まず現金を貯めて生活のリスクを下げて行動の可能性を広げるのが重要なことと、確定拠出年金自体に強烈なリスクがあるからです。現金貯蓄のあとは、まずリスクの低い「つみたてNISA」から投資生活を始めることを強く推奨します。

確定拠出年金のリスク

まず第一に確定拠出年金に入れたお金は60歳まで引き出すことができません。つみたてNISAなど株式投資では資産を売り払って現金化し取り出すことが可能ですが、確定拠出年金の場合は完全に塩漬けとなり、あなたがいくらお金に困ろうが取り出すことはできません。

第二に、特にiDeCoでは、数々の手数料がかかることです。
www.resona-tb.co.jp
注目すべきは「口座管理手数料」であり、これが最低でも年間2000円近くかかります。雑に40年使うと考えてしまうとこれで総額8万円取られてしまうわけです。iDeCoの広告では「手数料0」が謳われることが多いですが、これは金融機関が取る運営管理手数料であり、実質国が取る事務手数料や資産管理手数料は0円にはなりません。
このため、iDeCoを使う場合には最低でも年2000円儲ける必要があるわけです。
ただし、企業型の場合は、この口座管理手数料を含めて会社負担となって実質0円となっているところが多いようです。(かくいう私も該当します) この場合は手数料が0円になるのでとりあえず加入しておけばいい…とも残念ながら言えません。

第三のリスクは、あなたの将来の会社員生活そのものの変動リスクです。もう会社に就職してそれで定年まで上がれるという時代でもない以上、休職・転職・独立等々の生活の大きな変化は常に身近にあります。問題はそれらの変化を遂げた時に手数料と所得控除の面で不利を被る可能性があることです。
企業型拠出年金は退職してしまえばそこに加入し続けることはできず、いずれ国民年金基金連合会に移管されてしまいます。移管後は上述したような管理手数料が取られるようになってしまいます。要するに貯金に金を払って管理してもらうことになってしまうのです。そして60歳になるまで引き出せないので手数料を取られ続け、大損することになるのです。
また、確定拠出年金は基本的には節税、特に所得控除で稼ぐものであるのですが、退職等で所得が無くなってしまえば当然ながら所得控除もなくなります。そして所得もないのに管理手数料は取られ続けるわけです。このように、とにかく確定拠出年金というのはその瞬間稼いでいなければ儲かるどころか損する制度なのです。確実に儲けるためには職の安定性が必要なわけです。

確定拠出年金は完全非課税?

所得控除と投資利益に対する非課税制度が宣伝されるので、確定拠出年金に入れたお金は完全に非課税で受け取れるのかと思う人もいるかもしれませんが、間違いです。受け取り時には受け取り手数料の他、雑所得としての税金がかかります。非課税にするためには退職所得控除を使うか公的年金等控除を利用する必要があります。現状の税制では所得税+住民税よりは安くなるでしょうが、まかり間違って老後の税金が跳ね上がった場合はむしろ損する可能性は無いとは言えません。退職所得控除は基本的に40万円×勤続年数で計算され、勤続20年を超えるとさらに控除額が増えます。よって確定拠出年金は退職時にその多くを受け取ることになるでしょう。


で、確定拠出年金は入るべき?

よりリスクの低い投資の選択肢を潰していった後に確定拠出年金に入るべきでしょう。具体的には、現金の貯蓄→つみたてNISA→確定拠出年金の順で資産を貯めていくことをお勧めします。つみたてNISAで月33,000円は投資に回せるので、それ以上の額を投資に回せる余裕が出てから考えれば十分でしょう。見えないリスクは非常に大きいのですが所得控除自体は強力です。
ただし、確定拠出年金が非課税となる源泉は退職所得控除の存在が非常に大きく、十分な退職金が元々出る場合はそちらで控除枠を食うためあまり加入メリットがないかもしれません。
いずれにせよ、若い時から始めればその分得する制度ではあるのですが、ライフスタイルの変化に対するリスクが大きい制度であることを意識して入るかどうかを検討しましょう。