100分de名著 「ハイデガー 存在と時間」の感想

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名前は聞いたことがあるが、読んだことの無い哲学書である「存在と時間」の100分de名著きてましたので勢いで買って読みました。めちゃくちゃ読みやすくて面白くて分かりやすかったです。
中身としては「存在と時間」で語られていたことの解説と、「存在と時間」の内容に反するかのようにハイデガーナチスに傾倒していったことについての考察となっております。「世人」の概念などわかりやすく書かれており、引用されてる本文をみても?が100個ぐらい浮かぶ私にはとても良い本でした。

読んでいて痛感したのは「自分の頭で考える」という標語の普遍的な魅力とその危険性です。ハイデガーの思想ってつまるところ世間に流されないで自分と向き合って自分で考えて自分の人生を歩む必要があることを説いてるわけですが、問題はその自分の力で歩んだ方向が正しいかどうか、少なくとも破滅的な道でないかどうかを誰も保証しないことなんですよね。100分de名著の第四章がまさしくその考察だったわけですが、一つの解決の提案として倫理の視点の導入が語られており、最後はやっぱり「倫理」に回帰するのかと思ったりもしました。自由の果てに向かおうとするときこそ逆説的に究極の「世間への配慮」である倫理や道徳に回帰せざるを得なくなるのが、なんとも皮肉な話に見えますが、実際問題として現代の問題の背景に公共善の欠如があることを指摘し続けているサンデルの著書を読んだ後ではさもありなんという感情です。